東京と仙台に拠点を置く、映像制作を中心としたデザインスタジオWOWで、主にユーザーインターフェイスデザインを手がけている鹿野 護氏。昨今は、ユーザーとのコミュニケーション設計について、特に慎重に考える機会が増えたとおっしゃいます。今回は鹿野氏に、表現およびデザインに対してどのような姿勢で接するといいかについて、話を伺いました。インターネット広告に取り組むうえでも参考になる、成果物を提供することの本質に迫ります。

以前は、主にCGを駆使した映像制作をされているという印象でしたが、最近の鹿野さんはどのような仕事が中心になっていますか。
鹿野:最も大きな割合を占めるのは、ユーザーインターフェイス(以下UI)のデザインです。アプリケーションやスマートフォンに搭載されるシステム、あるいはビデオカメラの操作画面など、プロダクトデザインに近いところでのUIデザインを手がけることが多いです。かつてのUIは、単純にデバイスを操作するボタンであることが多かったと思うのですが、インターネットが普及したことによって、仮想空間とコミュニケーションを取るための接点であるという認識に変わってきました。これまで僕らが映像やCGなどで得た経験が、UIデザインにも生きてきて、プロダクトデザインへと開拓できると考えています。
―鹿野さん自身はプライベートワークを発表していますし、WOWとしてもクライアント案件以外のプロジェクトにも数多く取り組まれていますね。
鹿野:作ってすぐに効果が返ってくるものではなく、いつの日か思いがけず効果が返ってくるための表現のほうが、芯が強い表現だと考えています。作った時点で利益を考える必要性がない分、表現という行為自体に集中できるからです。そういった積み重ねが、1~2年先の仕事につながることがありますし、そこで経験した失敗が次の表現に生かされる利点もあります。会社としても、こういう取り組みはずっと続けていく方針です。先日WOWは設立15周年を迎えて、これまで手がけたプロジェクトをまとめた書籍を出版しました。モノ化するというアウトプットを通して、自社ワークを含めて振り返る作業にしたいと考えたわけです。
出版したWOWの書籍について説明する鹿野氏(左)